コラム

クエリ・ファンアウトとは?仕組みとLLMO・SEOへの影響と対策を解説

クエリ・ファンアウト

「SEO対策はきちんとやっているはずなのに、ChatGPTやGoogle AI Overviewsに自社サイトが全く出てこない」——そんなもどかしさを感じていないでしょうか。

原因のひとつに、AIが検索の裏側で使っている「クエリ・ファンアウト」という仕組みへの理解不足があります。これはAIが1つの質問を複数のサブクエリに分解し、並列で情報を集めて統合するプロセスのことで、この仕組みを踏まえずに従来型のキーワード対策だけを続けていると、施策が空回りしてしまうケースが少なくありません。

AIコマース研究所では、「情報はあるのに、なぜかAIに拾われない」という状態を「クエリ・ファンアウト欠損」という独自の視点で捉えています。本記事では、クエリ・ファンアウトの仕組みから、自社サイトのどこに情報の穴があるのかを見つけるための考え方まで、実務で使える形で解説します

後村 悠太朗
執筆者 後村 悠太朗

慶應義塾大学卒業後、新卒でLINEヤフー株式会社に入社。SEO歴8年以上・月間1億PV超えのSEOメディア責任者経験あり。2026年、LLMO対策支援に特化したAIコマース研究所を設立。支援対象はスタートアップからエンタープライズまで幅広く、ChatGPTをはじめとする生成AIを通して企業やサービスが発見・比較・推奨されるためのLLMO対策を支援している。戦略設計からプロンプト設計、コンテンツ改善、外部施策、効果検証まで一気通貫で伴走し、企業の認知拡大とブランド価値向上をサポートしている。

この記事のまとめ
  • クエリ・ファンアウトとは、AIが1つの検索クエリを複数のサブクエリに分解し、並列検索・統合して回答を生成する仕組みである。
  • SEOの発想では検索順位を追うが、LLMOの発想ではサブクエリ単位で情報が薄い「クエリ・ファンアウト欠損」を見つけ、そこを補強することが重要である。
  • トピッククラスター設計や構造化データの実装、独自の一次情報によるE-E-A-T強化が、クエリ・ファンアウト時代の本質的なLLMO対策となる。
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クエリ・ファンアウトとは何か

クエリ・ファンアウトとは、ユーザーが入力した1つの検索クエリを、AIが複数のサブクエリに自動分解し、それぞれを並列で検索・統合して1つの包括的な回答を生成する技術です。「Fan-out」は「扇状に広がる」という意味の英語表現で、1つの質問から複数の方向へ調査が広がっていく様子から名付けられています。

Google検索セントラルの公式ガイドでも、クエリ・ファンアウトは「ユーザーのクエリに対応するために、モデルがより多くの情報をリクエストし、関連性の高い検索結果を追加で取得するために生成する、同時実行の関連クエリのセット」と定義されています。

従来の検索エンジンが「1つのクエリに対して1つの検索結果リストを返す」シングルスレッド型だったのに対し、クエリ・ファンアウトは「1クエリ→複数サブクエリ→統合回答」というマルチスレッド型で動作する点が大きな違いです。

クエリ・ファンアウトが注目される理由

クエリ・ファンアウトが注目される背景には、検索エンジンからAI検索へのユーザー行動の急速な移行があります。Google I/O 2026では、AIモードの月間アクティブユーザーが10億人を突破し、クエリ量が四半期ごとに倍増していることが公表されました。

従来のキーワード検索では、ユーザーは自分で何度も検索語を変えながら情報を集める必要がありました。しかしAIモードに慣れたユーザーは、短いキーワードではなく長く具体的な自然言語で質問を入力するようになっています。

こうした複雑なクエリに単純なキーワードマッチングだけで応えるのは難しく、クエリを複数の観点に分解して並列処理するクエリ・ファンアウトが、AI検索の中核技術として位置づけられるようになりました

クエリ・ファンアウトの仕組み

クエリ・ファンアウトは「サブクエリへの分解」「並列検索」「情報の統合」という3つのステップで動作します。それぞれのステップを理解することで、自社サイトのどこがAIに評価されやすいのかが見えてきます。

サブクエリが生成される仕組み

AIはまず、ユーザーの検索クエリを分析し、その裏にある潜在的な疑問まで含めて複数のサブクエリへと分解します。例えば「名古屋でホテルライクなリノベーションが得意な会社を教えて」という質問であれば、「名古屋で施工可能か」「リノベーション会社か」「ホテルライクな施工実績があるか」「費用相場」「マンション施工への対応」「デザイン担当者の専門性」「施工写真」「顧客評価」といった複数の確認軸へと分解されると考えられます。

生成されるサブクエリは、目的に応じていくつかのパターンに分類できます。代表的なものとして、多義的な言葉の意味を特定する「曖昧さの解消」、ユーザーが言語化していない疑問を予測する「潜在ニーズの推測」、元のクエリをより具体化する「深掘り」、主張の裏付けと反論の両方を探す「確証・反証の収集」、関連する企業や人物などの情報を取得する「エンティティの取得」、周辺テーマへ展開する「関連トピックへの拡張」、対話の文脈を維持する「セッション文脈の保持」、ユーザー属性に応じて最適化する「パーソナライズ」の8つが挙げられます。

自社コンテンツがどのタイプのサブクエリに対応できているかを分析することで、不足しているテーマが見えてきます。

AIによる概要・AIモードでの実際の動き方

分解されたサブクエリは、従来のGoogle検索エンジンを使って同時並列に実行されます。人間であれば1つずつ検索操作を行う必要がある複数の疑問を、AIは一度に処理できるため、圧倒的に速く、かつ広範囲な情報収集が可能になります。収集対象はWeb検索結果だけでなく、ナレッジグラフ、ニュース記事、地図・ローカル情報など多様なデータソースにまたがります。

最後に、収集した情報は優先順位付け・信頼性評価・重複排除を経て、1つの包括的な回答として統合されます。この統合プロセスでは、複数のソースから同じ事実が確認できる情報ほど信頼度が高いと判定され、優先的に回答へ反映される仕組みです。この仕組みは、検索結果ページ上部に要約を表示する「AIによる概要」と、対話形式で深掘りできる「AIモード」の両方で活用されています。

クエリ・ファンアウトがSEO・LLMOに与える影響

クエリ・ファンアウトの登場により、SEOの重心は「単一キーワードでの上位表示」から「トピック全体の網羅性」へとシフトしています。特定の1キーワードで1位を獲得するだけでなく、そのキーワードから派生する複数のサブクエリすべてに質の高い情報を提供できているかが、AIに引用されるかどうかを左右します。

あわせて、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の重要性も増しています。AIが複数のサブクエリから収集した情報を統合する際、どの情報源を優先的に引用するかの判断にE-E-A-Tのシグナルが活用されているためです。専門家が執筆・監修したコンテンツや、独自の調査データ・一次情報を含むコンテンツが優先されやすい傾向にあります。

一方で、AI Overviewsの表示増加により、検索結果内で情報ニーズが完結してしまう「ゼロクリック検索」も増えています。Pew Research Centerが2025年7月に公表した調査では、AIによる概要が表示された検索結果ページで従来のリンクがクリックされた割合は8%にとどまり、AIによる概要が表示されない場合の15%と比べて約半分の水準でした。

ただし、AI経由でサイトに訪問するユーザーは「もっと詳しく知りたい」という明確な目的を持っていることが多く、コンバージョン率は相対的に高い傾向があるとも言われています。流入の「量」が減る一方で「質」が変化しているという前提に立った施策設計が求められます。

【事例】クエリ・ファンアウト視点で自社を見直した例

ここまで見てきたように、クエリ・ファンアウトへの対策というと「網羅的な記事を書く」「サブクエリを予測してキーワードを盛り込む」といった発想になりがちです。しかし、AIコマース研究所では、それだけでは不十分だと考えています。

重要なのは「何の情報があるか」ではなく、AIが質問を分解したときに、どこで情報が途切れるのかを見ることです。私たちはそれをクエリ・ファンアウト欠損と呼んでいます。

クエリ・ファンアウト欠損とは何か

クエリ・ファンアウト欠損とは、AIがあるクエリをサブクエリへと展開した際に、特定のサブクエリに対応する情報だけがWeb上に薄い、あるいは存在しない状態を指します。

SEOの発想では「対策キーワードの検索順位」を追いかけますが、LLMOの発想では「AIが推薦判断をするときに、材料として不足している論点は何か」から逆算します。この視点の違いが、AIに引用されるサイトとされないサイトを分けるポイントになります。

具体例で見るクエリ・ファンアウト欠損の発見プロセス

実際にクエリ・ファンアウト欠損をどう見つけるか、リフォーム会社を例に考えてみます。ユーザーが「名古屋でホテルライクなリノベーションが得意な会社を教えて」と検索したとします。この質問は、AIによって次のような確認軸へファンアウトすると仮定できます。

ファンアウト先Web上の情報の充実度
名古屋で施工可能か
リノベーション会社か
ホテルライクな施工実績があるか
費用相場がわかるか
マンション施工に対応しているか
デザイン担当者の専門性×
実際の施工写真
顧客評価

この場合、「名古屋」「リノベーション」といった主要条件についてはWeb上の情報が満たされています。しかし、「ホテルライクな施工実績」や「担当者の専門性」というファンアウト先では、情報が明らかに弱くなっています

従来のSEOだけを見ていると、「リノベーション 名古屋」というキーワードの検索順位を上げる施策に集中してしまい、この情報の薄さには気づきにくいものです。

クエリ・ファンアウト欠損への対策アプローチ

クエリ・ファンアウト欠損が見つかった場合の対策は、具体的なコンテンツの追加・強化に落とし込むことができます。先ほどのリフォーム会社の例であれば、ホテルライクな施工事例だけを集めた事例ページを作る、各事例にデザインコンセプトを明記する、設計担当者のプロフィールページを掲載する、「ホテルライク」という言葉の自社基準での定義を明文化する、といった施策が考えられます。

このように、クエリ・ファンアウトへの対応は「AIがどんな検索をするかを言い当てるゲーム」ではありません。ファンアウトした先で、自社について説明しきれていない論点を発見するためのフレームワークとして活用するものだと、AIコマース研究所では捉えています。

クエリ・ファンアウト時代に取り組むべきLLMO対策

ファンアウト欠損という個別の視点に加えて、サイト全体で取り組むべき基本的な対策も押さえておく必要があります。

まず、関連するサブテーマの記事を内部リンクでつなぎ、特定のトピックについて「面」で網羅性を示すトピッククラスター設計が有効です。次に、Q&A形式で質問と回答を明確に対応させる、番号付きリストで手順を整理する、比較表でデータを視覚的に示すなど、AIが情報を抽出しやすい構造化されたコンテンツを意識することも欠かせません。FAQPage schemaやArticle schemaといった構造化データの実装も、AIがコンテンツの意味を正しく理解する助けになります。

そして根本的には、独自の調査データや実体験に基づく一次情報を発信し、専門家による監修や執筆者情報を充実させることで、E-E-A-Tを継続的に強化していくことが、クエリ・ファンアウト時代における最も本質的な対策だと言えます。

クエリ・ファンアウトに関するよくある質問

クエリ・ファンアウトとは何ですか?

AIが1つの検索クエリを複数のサブクエリに自動分解し、並列で情報収集・統合して回答を生成する仕組みです。
Google検索セントラルの公式ガイドでも、関連する複数クエリを同時実行する技術として説明されています。従来の1クエリ1検索結果という仕組みとは異なります。

クエリ・ファンアウトの対策ツールはありますか?

特定の1ツールで完結する対策ではなく、サブクエリ単位で自社サイトの情報の有無を分析する取り組みが必要です。
LLMO専門の診断サービスや、構造化データ・トピッククラスターを設計するコンテンツ制作支援を組み合わせて進める企業が多い傾向です。

クエリ・ファンアウトはRAG(検索拡張生成)とどう違いますか?

RAGは外部情報を検索してAIの回答精度を高める技術全般を指し、クエリ・ファンアウトはその中でクエリを分解する具体的な手法の1つです。
RAGという大きな枠組みの中に、クエリ・ファンアウトを含む複数のクエリ処理手法が存在すると整理すると分かりやすくなります。

クエリ・ファンアウト対策として何から始めればよいですか?

まずは自社の主要な対策キーワードについて、AIがどのようなサブクエリへ分解しうるかを洗い出すことから始めるのが有効です。
洗い出したサブクエリごとに自社サイトの情報の有無を確認し、情報が薄い「ファンアウト欠損」箇所から優先的にコンテンツを補強していく進め方が現実的です。

クエリ・ファンアウトを理解し自社の情報の穴を埋める

クエリ・ファンアウトとは、AIが1つの検索クエリを複数のサブクエリに分解し、並列検索・統合して包括的な回答を生成する技術です。この仕組みが広がるなかで、SEOはキーワード単位の最適化からトピック全体での網羅性を問われる時代に移行しつつあります。

ただし、網羅的なコンテンツを作ることだけがゴールではありません。AIが質問を分解した先で、自社について説明しきれていない論点、つまり「ファンアウト欠損」がどこにあるのかを見つけ、そこを埋めていくことが、AI検索時代における実践的なLLMO対策の出発点になります。まずは自社サイトの現状を把握するところから、対策を始めてみてはいかがでしょうか。

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